被爆者の葬煙

被爆者の葬煙

曲名 

被爆者の葬煙

作曲者 

金藤豊

編成 

器楽、邦楽

発表 

発表日:1984.3.20 東京文化会館 今日の作品展84—三分前のメッセージ
演奏者:尺八 山下孝太朗、ピアノ 伴場三恵子

楽譜・音源 

備考 

“三分前のメッセージ”の意味は、国際的物理学者の組織であるアトミック・サイエンティストの雑誌が、前年秋のパーシングⅡヨーロッパ配備などの核軍拡競争に対して、核戦争の危機が三分前に迫ったと発表した事をうけた形で、音楽家もしくは音楽によるメッセージを伝えたいということである。従って、このコンサートで演奏された全作品を貫いていたのは、反核と人類の生存というテーマである。
いずれの作品も民族的な色彩の表現で、被爆国の願いを伝えているが、中でも「被爆者の葬煙」は作曲者の原体験を静かな語り口で伝え胸せまるものとなっていた。(藤本洋『赤旗』1984.4.1.)
作曲者の言葉: 昭和20年、当時私は、広島から3時間程山の中に入った、「吉田」という田舎の寺に疎開していた。8月6日原爆がおちたあとのある日、「オイ、駅に行って見ろよ、それはひどいもんだぞ」と友人が帰って来て言った。私達は駅へ出かけて行った。そしてそこで目にした事は到底今、筆舌に尽くしがたい。ホームから駅のいたる所に死体が置かれ、列車の中は全身焼けただれて虫の息の人達であふれ、あたり一面に異様な臭いが立ちこめている。余りのすさまじさに、私達は誰一人声も発せず、押し黙って、寺へと帰った。そしてある日ふと気が付いた。山の彼方此方から幾筋も、煙が上がって居るのを。「はて、あの煙は……?」同時に駅の惨状が頭に浮かんだ。何日も来る日も来る日も煙は上っていた。思うにあの煙は私の居た所のでなく、広島を中心とした中国地方一帯の山々で数えきれない煙が夜空にたなびいたのだと……。安らかにお眠り下さい等到底私には思えない。

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